実は、半年前まで水樹奈々さんの曲を聞いた事もありませんでした。雑誌などで紹介されている写真を見て「かわいい声優さんだな」と思い、「MAGIC ATTRACTION」を買ってからその歌唱力に圧倒されました。そして半年後、にわかファンはZepp Osakaに辿り着きました。
にわかファンが無謀にも
整理番号1600台という、後ろの場所しか取れない番号のチケットを握り締めて1階のホールに入る。ステージは熱気と人と、これからはじまるライブの期待が交じり合った雰囲気だった。1階は全て自由席。ステージを見られない後方の席のために小さなモニターを置いていた。モニターからは新曲「still in the groove」のPVが流れ、ライブ前の会場をクールダウンさせるどころか、盛りあげてゆく。そして、あたりは闇に包まれ――。
赤いハット、赤いスーツで「TRANSMIGRATION」を歌い始める奈々ちゃん。ホールの熱気が弾けた。期待が大歓声へと変化する。
最初にバンド紹介をした後に、初期の頃の名曲「Heaven Knows」。サビの部分である「Heaven Knows」の大合唱がホール内を揺らした。同じく初期の作品(New Sensationのc/wにもなっているが)「リプレイマシン」。全く個人的な判断基準だが、バラードを歌えない歌手はあまり聴かない。勢いだけなら若さでカバーできる。スロウテンポを聴かせる所に、意味がある。
なないろアトラクション
水樹奈々自身の存在感をホール中に示した所で状況は一転、ひまわり仕立てのドレスと黄色いフリルに着替えていた「HONEY FLOWER」。彼女自身がぜひ着てみたいと言っていたアイドル仕立てのドレス。ここからはドレスに合わせて可愛らしい曲が続く。「恋してる…」「二人のMemory」「想い」と、ひまわり娘の歌手、いや、アイドルが歌っている。
アイドルは再び歌手の顔を見せる。三度の衣装変えを経て「POWER GATE」。カウガールが水樹奈々ならスタンピードするのは観客か。そして「他の歌手の曲をカバーするコーナー」(←名称知らんのよ)。へ入った。
真骨頂はここにあった。箱の中からボールを取り出し、ボールに書いていた曲を歌うのだが、大阪では奇しくも同じ声優・林原めぐみの「Northern Lights」を取り出していた。「出だしが早いんだよね」と苦手そうだったが(事実、出だしは失敗した)、後は本家並みに歌いこなす。さすがプロ!
「空と心と…」と言う古い曲から始まる後半戦。
終幕へ向けて力を温存していたのかと思う程、怒涛の構成だった。「フリースタイル」「ジュリエット」であどけない少女の顔を見せたかと思うと、タンクトップに銀のラメ、そしてダンスで挑んだ「still in the groove」。年齢を瞬時に10歳くらい上下させてみせる歌の力。大人の女性の色気がそこにある。熱狂はスピードをあげてテンポよく「supersonic girl」「suddenly〜巡り合えて〜」、ツアータイトルの「New Sensation」と続く。最後の「refrain」では線香花火のように、しめやかに宴を終わらせた。生演奏ならではの心に沁みる歌を堪能したひとときだった。
キュートなアイドル×パワービューティー
昔、学校の授業で言われた言葉がある。矛盾する性質を併せ持つものは強い、と。身近な例えだと、スピードを上げようとすれば正確さが落ちる。車を運転する時も速度を上げれば事故を起こしやすいし。仕事にしても早く仕上げようと思えばミスを起こしやすくなる。試験問題を解く時とも似ている。頭をクールにして熱い心を持つ、考えても中々できるものではない。ふたつの違った性質を同時に手にすることは、思った以上に難しいのだ。
しかしライブではいとも簡単に異なったふたつの性質を併せ持っていた奈々ちゃん。ひとつめは「キュートなアイドル」だった。「グラナナ」とまで言われたようにルックスも良い。「HONEY FLOWER」で見せた衣装は歌姫ではなくて、姫そのもの。「エル・オー・ブイ・イー/ラブリー奈々ちゃん」などなど、ファンの掛け声もアイドルを応援しているノリだった。巷の「声優アイドル」としても十二分に本領を発揮できるだろう。
もうひとつは、「パワービューティー」。 愛らしさで惹きつけるのもひとつの魅力なら、力強さで会場の視線を釘付けにするのも魅力。「POWER GATE」に代表されるように真摯な態度で盛り上げるにしてもそう。「refrain」のようなアカペラだけでも大丈夫よとばかりに紡がれるバラードにしてもそう。見る者の視線を、聴く者の耳を奈々ちゃんへと集中させられる力を持っているのだ。
過去、雑誌「hm3 SPECIAL」には奈々ちゃんのインタビューが何度か掲載されていた。「もっともっと歌がうまくなりたい」と常々言う彼女は、「still in the groove」よろしく現状に止まる術を知らない。いや、立ち止まる意思などないのだ。
歌姫の挑戦は、まだまだ、これから。
おまけ(2003年7月26日の日記より)
Zepp Osakaの一階って後ろの客はが見えるようにはなっていないのね。後ろの客は奈々ちゃんが写るモニターを眺めておけということなのね。安全対策を施した上で、段差を作って後ろの人間にも舞台が見られる構造だったら良かったのになぁ。(後日訂正:実際には緩やかな段差がありました)
んで、日記。ライブを行うホール内で、偶然に女の子が私の横に来たのです。しかもひとりで。普通、こうしたイベントは男女比が非常に偏っているので有名です。ちなみに、今回のライブでは5パーセントから10パーセントくらいでした。目算。
という訳で珍しいのです。雑文を書く参考にしようと、(しかも女の子のファンだし)奈々ちゃんのファンってどんなものだろうと思ってライブ終了後、お行儀よく声をかけてみました。
走って逃げられました。
演奏曲一覧
01.TRANSMIGRATION
02.アノネ 〜まみむめ☆もがちょ〜
03.Heaven Knows
04.リプレイマシン
05.HONEY FLOWER
06.恋してる…
07.二人のMemory
08.想い
09.POWER GATE
10.What Cheer?
11.Northern Lights(林原めぐみカバー曲)
12.空と心と…
13.フリースタイル
14.ジュリエット
15.still in the groove
16.supersonic girl
17.suddenly 〜巡り合えて〜
18.New Sensation
19.refrain
〜アンコール〜
01.The place of happiness
02.PROTECTION
会場:Zepp Osaka / 2003年7月26日(土) 18:00開演
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