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D.C.~ダ・カーポ~感想 枯れない桜の恋物語

【注意】容赦なくネタバレしています。うっかり見て後悔しても知らないぞ。
Windows版のゲームを元にして書いています。PS2版とは少し違うはず。

目次

プロローグ

1年中“枯れない桜”が咲き誇る初音島。

そんな不思議な桜を研究する人間がいるかたわら、

一般の方々はいたって平凡な生活を送っていた。

桜が枯れないのが珍しくたって生活は変わらないのだ。

――桜の香りに導かれるように少女は帰ってきた――

そんな平凡な世界の中心に位置する風見学園に、

なにもないところから和菓子を生み出す力と、

他人の夢を見せられる力……、

平凡とは程遠く、

非凡にもほど遠い、

2つのメルヘンな力を使う少年がいた。

――彼女の好きな魔法使いの見る夢は――

和菓子をこよなく愛する学園のアイドル、

口うるさいくせに甘えん坊の妹、

ぼけぼけ天然色の先輩に、

夢の中に姿をあらわす騒々しい幼馴染、

天然元気で“わんこ”と呼ばれる後輩。

――始まりは終わりに向かい――

彼と彼女らが卒業間近の“学園”で出会うとき、

ちょっとこそばゆいくらいが丁度よい、

恋物語のはじまりはじまり。

――終わりは始まりを呼び込む―― 

「CIRCUS Official Site」D.C.~ダ・カーポ~ プロローグより

D.C.~ダ・カーポ~感想/システム編

学園ものに弱い人

「学校生活は3年間かけてやる合コン」と、ラジオで発言した声優さんがかつていました。だってさ、学生を卒業しちゃうと、普通はゲームか妄想の中でしか学生には戻れないんだよ。そんな現実がある中で学生生活をしているってことは、実はすごい所なんだよ、学校って。

それを考えると、もはや遥か昔に中学高校を卒業した私にとって、学園ものと言うゲームの評価は、たとえつまらなくても、最初から甘い評価を下してしまいがちです。実際は辛い時の方が多いかもしれないし、ゲームのようにハッピーエンドが約束されているとも限らない。それでも甘い郷愁に襲われそうになります。

「D.C.~ダ・カーポ~」もそんな私のツボを突きまくった学園ものの恋愛アドベンチャーゲーム。しかも「こそばゆい萌え」を体験できると言ったら、もう、やるしかないでしょう、兄さん。あ、念のため説明しておくけどWindows版のゲームは18才以上指定になっています。ちなみに、このページは全年齢対象なので安心だね。

イベント回想モード・大活躍

「D.C.~ダ・カーポ~」のシステムで何が良かったかといえば、「イベント回想モード」です。ゲームクリアしてから各ヒロインのシナリオイベントが全て好きな所から見られます。この感想ページを作るのに、どれだけ役に立ったことか。このシステムがあるからこそ、感想を書こうと思ったくらいですから。

逆にいらないなと思ったのが「ガヤシステム」。ダ・カーポでは昼ごはんの時や、下校時に主人公が立ち寄る場所を決められるのですが、目当てのヒロインの所へ行こうと思ったらゲームから聞こえる声(ガヤ)を頼りにして行くしかありません。ヒロインがどこにいるかは表示されてなく、プレイヤーの推測で行くしかないのです。ところがこの「ガヤシステム」、困ったことに本当のガヤにしか聞こえないというていたらく。役に立たないよっ。

さて、他に注目すべきは「音」です。魅力あるヒロインたちを演じる声優さんたちはアニメ版もゲーム版もどちらも豪華です。熱演しています。声優ゲームと呼んでも差し支えないくらいに。

BGMやテーマ曲に目を向けると、オープニングの曲「ダ・カーポ~第二ボタンの誓い~」以外はおとなしめのBGMや曲が多いのですが、全体的にどの曲もシナリオの邪魔にならず、目立たず、それでいて耳障りの良い曲でした。特に、エンディング近くの一番盛り上がるシーンで流れる挿入歌「Small Cherry~promised bell~」は秀逸です。

文章も忘れちゃいけない。シナリオ自体は音夢やさくらのシナリオを除けば特筆すべきものはそうないのですが、各シナリオを読ませる文章は一目おけます。主人公の一人称で物語が語られますが、その文章が非常に綺麗ですね。笑いあり涙あり、もの書きさんの力が伺えます。思わずこのページの感想を書く時に真似しようかと考えたくらいに。←いや、マネしています。随所で織り込まれるギャグも笑わせてもらいました。ただ、「2ちゃんねる」や「Sister Princess」など他所からネタを取ってきたのはどうかと思いますが、まあ、この際いいでしょう。さくらシナリオに入る直前のシスプリネタでは、私の家族が不審に思って部屋を覗きに来る事態になる程爆笑してしまいましたし。

個人的評価

キャラクター
音夢 > ことり > 頼子 > さくら > 美春 > 眞子 > 萌
シナリオ
さくら > 音夢 > ことり > 美春 > 頼子 > 眞子 > 萌
お勧め攻略順
ことり → 萌 → 眞子 → 音夢 → さくら → 美春 → 頼子

総合評価
☆☆☆☆☆☆☆☆☆★ (90点)
音夢かことりに萌えることができれば高評価は確実。萌え尽きてください。 

発売日:2002年6月28日 定価:8,800円
発売元:CIRCUS

D.C.~ダ・カーポ~感想/キャラクター編

朝倉音夢(CV:鳥居花音/野川さくら)

「おはよう、兄さん」

実際に妹がいる人に、上のような台詞を言われたことがあるか? と聞いた事があります。当然のごとく、そんなことは聞いたこともなく、むしろ妹から疎まれている兄貴だという結果でした。調査の対象がまずかったのか、それともこれが現実なのか。

「おはよう」と、最高の笑顔を向けて兄を優しく起こしてくれる妹は存在しない。なら、理想の妹を作ろうじゃないか、おー! と考えて生まれたのかどうかは分かりませんが、「かったるい」が口癖の主人公(朝倉純一)の義理の妹である朝倉音夢。彼女はぐーたらな主人公に代わって家事全般をかいがいしくこなします。なぜか一緒に両親は住んでいないが生活費は潤沢にある。義理の妹、両親は家にいない、はい、もうギャルゲーの基本ですね。そんな音夢の苦手なものは料理。主人公に言わせると「あまりのまずさに暗殺者が通販を申し込むに違いない」らしいです。うんうん、完璧な人間なんていないんだよ。誰だって欠点を持っているから、より輝くんだよ。自慢じゃないが俺は味オンチ気味なので音夢の手料理を食べきる自信はあります。だから。

頼む! 俺も朝倉家に住まわせてくれ。いや、むしろ妹さんを下さい! お兄様。

バカやってないで先、行きましょう。
音夢の魅力はなんと言っても、舌足らずな話し方にあると思います。語尾が「~だもん」とか「~だよぉ」とか。これを甘えた感じで喋ってくれる訳です。これはもう、鳥居花音さんの声の魔力ですね。笑顔を見せながら丁寧語(俗にいう裏モード、または裏音夢)で怒る声、迫りくる病気に怯える声。どれをとっても一級品です。完全にその声にやられてしまいました。とろとろです。鳥居花音、恐るべし。で、テレビ版。こちらは野川さくらさんがやっていますが、結構がんばっていると思いますよ。萌えの破壊力もありますし、声の質がどことなく似ているんですよね、原作の鳥居さんと。納得のいくキャスティングです。

さて、音夢シナリオは前半と後半で大きく変わります。見ていてのたうちまわるような萌えの精神に溢れている前半と、鬱状態一歩手前で、さらには音夢が死んでしまうかもしれないとの不安感さえ覚える後半。前半と後半のアンバランスな状態がシナリオ全体の不安定さをも加速させます。

音夢には喜びも、悲しみも、全ての感情を主人公の兄と共有して二倍にできる不思議な力がありました。しかし、その力は一人分のコップに二人分の水を注ぐようなもの。入れすぎたコップの水はやがて溢れ出します。音夢も例外ではありません。兄と恋人同士になった喜びと引き換えに、彼女の心の中の器が崩壊を始めたのです。彼女の心から溢れ出た物は、不思議が存在する島にいて、常識外れた力を知ってなお、異様な美しさとしか呼べない代物でした。

それは、桜の花びらです。音夢の口から、桜の花びらが吐き出されるのです。彼女の心の中から出てきたものは、大切な記憶。主人公やさくらは音夢を救おうと手を尽くしますが、その間にも桜の花びらは降り積もるばかり。やがて、死を覚悟した音夢はひとつのささやかな夢を叶えようと家を飛び出します。それを叶えてあげようと音夢の行く先を追いかける主人公。やがて、学園の屋上で主人公と出会った音夢は、自分の想いを伝えて息を引き取ります。

もうこのあたりでプレイヤーは涙が出ています。ディスプレイがにじんで前が見えません。ああ、音夢。とうとう逝ってしまったのか。うわぁぁぁぁぁん、と泣きながら再び画面を見ると……。

って、あれ? もしもし? 音夢さん。なんで生きてるの?

そうです。音夢は生きていました。しかも何の説明もなく。ただ生きていると言う事実だけがプレイヤーには示されます。これはこれで嬉しいけれど、かなり釈然としないままエンディングを迎えます。

実は音夢シナリオだけ二つのエンディングが用意されています。ひとつはさっき示した音夢が生きているハッピーエンド。もうひとつが、音夢が本当に死んでしまったバッドエンド。物語の筋を優先するなら、泣く泣く音夢を殺すべきでした。仮に強引に生かしてハッピーエンドにするならせめてある程度の謎は解明させてください。

さて、最後に音夢の名台詞です。冒頭に登場した「おはよう、兄さん」です。シチュエーションを変えて何度も登場するのですけど、起こされた時に、可愛い妹が自分の顔を覗き込んでいる。これに勝る幸せがありますか。沈み込んでいる時も怒った顔も裏モードも好きだけど、やっぱり音夢には笑顔が似合います。

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芳乃さくら(CV:北斗南/田村ゆかり)

「だから、ごめんなさい」

姿は金髪碧眼の小学生だけど、実はアメリカで大学の博士号を取っていて、でも行動が姿と同じで子供っぽくて、その行動の大半はカモフラージュ。それでもやっぱり素のさくらもあどけなさが混じっていて、いとおしいです。しかし萌えは一切なし! 彼女に萌えは必要ないのです。初音島最大の謎、枯れない桜についての謎を解き明かすと言う重要な使命を帯びていますから。

初音島を見守る枯れない桜。それは主人公の祖母――さくらの祖母でもある魔法使い――が作り上げたひとつの魔法のプログラムでした。魔法は人々の想いの力が源泉となる。それならば、ひとりひとりの小さな願いを少しずつ集めて、助けを、奇跡を必要とする人にあげようと考えました。その願いを集めていたのが、枯れない桜と、桜の花びらたちなのです。

事実、枯れない桜には願いを叶える力がありました。萌先輩が望んだ夢の世界、ことりの心を読む力、頼子が願った美咲の幸せもそう。ところが、このシステムにはバグがありました。それが、芳乃さくらと言う存在だったのです。主人公には作用しませんでしたが、同じ魔法使いの血をもつさくらには作用してしまいました。彼女がそれほど意識しなくとも、かすかな願いですら現実になってしまうという致命的な欠陥が。おかげで主人公をめぐる恋のライバルだった音夢は、自分のシナリオ以外でも桜の病気を発症してしまうという、とんでもないとばっちりを受けてしまうのですが。

と、さくらシナリオはダ・カーポの根幹に関わるだけだけあって、いろいろ取り上げたい名台詞を残してくれているのですが、私が選んだのはなんでもないこの一言。「だから、ごめんなさい」

大きな過ちを犯してしまった時、自分ならどうやって謝るだろうと考えてみました。仮に私の両親を裏切るなら自分なら一言、「済まない」と言って頭を下げるかなぁ。この四文字に今までの付き合いの重さを全部込めて吐き出した言葉で謝るでしょう。あ、もう一度書くけどこの場合は謝る相手が自分の親だった場合ですよ。

初音島の枯れない桜と芳乃さくらの関係は、親子関係に見えなくもありません。さくらの成長を手助けしながら(それがお節介になる時もあったかもしれないが)、十数年間見守ってきた親。もしかしたらそれは、既に他界した祖母の存在が樹に乗り移ったのかもしれません。

あるべきものをあるべき状態に戻す為、桜を枯らそうと彼女は決意します。自分の望みを叶えられる以上、さくらにとって初音島に住む事はすなわち、神様であるのと同じです。がんばって大学の博士号を取ったのも、主人公が振り向いてくれたのも、もしかしたら知らずと初音島の枯れない桜が影響していたのかもしれない。芳乃さくら個人の力ではないのかもしれない。桜を枯らした後、今までの芳乃さくらではない自分がいるかもしれない。アイデンティティーを失うという恐怖。

枯れない桜を枯らすこと。幼い頃は絶対的な保護者であった親にやがて追いつき追い越すように、さくらにとってそれは本来の自分自身を取り戻すために乗り越えなければならない試練だったのです。今まで自分を見守ってくれて、時には助けてくれたんだよね、ありがとう。けど、だけど、ううん、だからこそ――。

ごめんなさい。

たった六文字に万感の想いを込めて、枯れない桜に立ち向かいました。桜の病気を発病する音夢シナリオの悲壮さと比べて、同じ状況になってもさくらシナリオは非常に安定しています。「大丈夫、きっとさくらなら乗り越えてくれる」 そんな安心感が、彼女の小さな背中に芽生えていたのですから。

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白河ことり(CV:日向裕羅/堀江由衣)

「私達、もう恋人同士さんなんだよ」

TBSで「学校へ行こう!」と言う番組がありますよね。その中で「未成年の主張」と言う人気コーナーがありました。学校の屋上で全校生徒、いや、全国に視聴者がいるテレビカメラを前にして自分の言いたいことを叫ぶコーナーでした。で、その中にいるんですよねぇ。「あの番組で、あの娘に告白してやる!」と考えた人が。う~ん、テレビを見る側には面白いんだけど、ネタ以外の何物でもないからね。全校生徒を前にして言えますか? あなたが好きですと?

で、学校の屋上よろしくそれをやっちゃう訳ですよ。風見学園付属校の人気をひとりじめしそうな学園のアイドルが、容姿抜群、才色兼備、品行方正な歌姫の白河ことりが。卒業式のあとの学園祭で、体育館のアリーナから言っちゃうんですよ。
「私は、朝倉君が好きなんです」と。

主人公は義妹の音夢と血のつながりはなくとも強い絆で結ばれています。それを打ち破るには、いくらことりとは言えども容易ではありません。だから、振り向かせるには全校生徒の前で告白するくらいの意気じゃないと気持ちが届かないと思ったのでしょう。その心意気に打たれて主人公は、なんと壇上で、衆人環視の中でことりに口づけします。それが俺の答えだと言わんばかりに。言葉よりも雄弁に。

あ~もう。書くのがアホらしくなってきた。このバカップルめ。羨ましいじゃねーか勝手にやりやがれこんちくしょー!(萌えるために抱いていた枕を投げ捨てた俺)
そして、告白した日の夜、めでたく恋人同士になった主人公を目の前にして言う言葉が冒頭の台詞です。もうね、ことりを目の前にしてあんな台詞聞かされてみなさいよ。うん、堀江由衣さんに言ってもらえるとさらに良いかも。投げ捨てた枕をまた抱きしめて床に寝っころがって悶えて死ぬじゃないかバカヤロー!←いやむしろ、このシーンを見ている所を誰かに見られたら死んでしまうだろう。

と、これ以降シリアスモードに入る前にバカップル路線が続いてゆくわけで。ダ・カーポのテーマである「こそばゆい恋愛」を地でゆくシナリオで、萌え度は音夢シナリオをも凌駕する可能性を秘めています。そんなことりを演じきった日向裕羅さんには喝采の拍手を送らずにはいられません。

さて、気になることをふたつ。ことりが実は心の声を聞けるテレパスだったとかはどーでもいいです。アニメでは登場直後で分かっていますしね。それよりも、歌が上手いといいながらなぜ作中では一度も歌われなかったのですか。枯れない桜と同じく初音島の謎になるのですか(笑)。

もうひとつ。二人が枯れない桜の下で二度目の出会いをかわすのですが、二度目の出会いが唐突すぎてユーザーを置き去りにした構成はあまり頂けないと思います。「D.C.~ダ・カーポ~」の前作品「アルキメデスの忘れ物」で二人の初めての出会いを描くのではなく、ダ・カーポの作中に入れて欲しかったと思うのは贅沢でしょうか?

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水越萌(CV:夏野向日葵/伊月ゆい)

「幽霊だって魂だって在りますよ」

萌先輩ファンの方、ごめんなさい。あんまり印象に残っていないんです。おっとり天然ボケの居眠りぽけぽけ木琴少女と言う設定。特技は寝ながら歩いてしかも木琴を叩けること。音は保障しませんが。まさに私向けに直球ストレートなキャラクターだったはずなんです。でも、なぜか、名前も萌なのに萌えませんでした。

むしろねぇ、萌先輩をとりまくサブキャラクター、眞子や主人公のたちの行動の方が元気があるんです。たとえば、失踪した萌先輩を探しにゆくエンディング直前のシーンの主人公と眞子のやりとりなんて良いですねぇ。眞子に「あのお姉ちゃんの恋人になれるくらいだもんね」とハッパをかけられたり、主人公は落ち込んでた眞子を「お前は怒ってたくらいが可愛いんだからな」と、からかって励ます。ああ、これだよ男女の友情は。と、当のヒロイン抜きで勝手に盛り上がっていました。

いかんな、だんだん萌先輩の居場所がなくなってきた。と言うわけで、冒頭の名言です。彼女が強い意志を持って言う台詞はそうありません。その中のひとつがこれです。実は萌先輩、昔に友人の少年「啓くん」を交通事故で亡くしています。彼女が心から信頼した、たった一人の友人を。ある日、萌先輩はその友人が出てくる夢を見たのです。それ以来、彼女は夢でその少年と話すことに夢中になりました。

眠れば、啓くんに会えるんだ。
彼女は現実を忘れて、睡眠薬をも使って、夢の世界へ逃げ込んだのでした。

この場合は死者が強力な恋の鞘当てとなるのですが、恋愛ごとでなくても、現実から逃げたい、その思いを抱えている人もいるかもしれません。突き詰めればこれを書いている私も現実逃避したい、今を取り巻く現状から逃れたいと思うことは多々ありますし。

だけど、夢の世界はいつか終わる、現実に帰らなくてはいけなくなる。始まりがあれば、終わりがある。いくら現実から目をそらそうとしても、やがては反動が戻ってくる。当たり前の結論だけど、逃げ出せない、ううん、逃げずに立ち向かってゆく、それができなきゃ折り合いをつけてゆかなきゃなぁと思わせるシナリオだ、と違う意味では感心してしまいました。

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水越眞子(CV:長崎みなみ/松岡由貴)

「まあ、最強は”鴨”の入った南蛮鍋よね」

ゲームでは最も悲惨な設定になってしまった人物。や、別に死ぬなんてことはなくて、他のシナリオに比べて、眞子シナリオは異常に短すぎるのです。これなら眞子を隠しキャラにして、美春を正規のルートで攻略できるヒロインにした方が良かったと思います。

女の子からの眞子自身への告白を逃れるために主人公と恋人同士のフリをする。そのうちにだんだん互いのことを意識して……。と、割とありきたりのシナリオ。どうせなら彼女を好きな女の子を作中に出して修羅場かミステリーを作るか、いっそ元から主人公を好いていた(と思います、実際。そうでないとこんな頼みごとしませんよ)眞子自身の自作自演説も期待したのですが、それもありません。まあ、アニメ版では改良されて、眞子を追いかけていた娘が出ていましたね。

さて、そんな「悲劇のヒロイン」である水越眞子。他のシナリオでは主人公の気の置けない「漢」の友人として存分に暴れてくれます。手から炎の闘気を出して主人公に鉄拳攻撃。果ては本の背表紙(表紙ではない!)で主人公の頭を叩き割る。それは音夢の「時空の断層が見える」裏拳にも匹敵する威力です。そんな攻撃を受けてよく生きているな朝倉純一。この暴力、もとい、主人公に気を許した設定はアニメでも遺憾なく発揮されています。演じるのも松岡由貴さんだから、余計に元気が出るキャラクター。

そんな彼女ですが、姉の萌先輩と同じで鍋料理が大好き。冒頭の台詞は眞子が鍋に対して最大限の愛情をぶつけるシーンから抜粋しました。
ああ、あんた、やっぱり萌先輩の妹だよ。

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天枷美春(CV:春野日和/神田朱未)

「美春も『天枷美春さん』のように、みんなを幸せにする存在でいたいんですよ」

アニメ版では三回目の放送にしてロボットだと言うことがばれていますが、ゲーム版では美春は隠しキャラ、それも美春シナリオに入らないとロボットだと言うことが分かりません。そして、美春シナリオは他のシナリオと違い、枯れない桜の魔法のファンタジーとは一線を画します。ま、もともと暦先生たちの天枷研究所で作られてたロボットの話で、怪我をした本物の美春の代わりに学校へ出てきますから。

そんな美春に与えられた時間は多くありません。半年、早ければ二ヶ月くらいでロボットとしての寿命を全うすることになると暦先生から言われます。ですが、ロボットの美春の面倒を見ることになった主人公が、明るくて純真な心を持った彼女に惹かれるにはその限られた時間で充分でした。他のシナリオでも美春を見かけた人も思ったでしょう。美春はいつでも明るくて、元気で、健気で、バナナに目がなくて、朝倉兄妹のことが大好きで。そう、彼女には周囲の人を元気にさせる力がありました。いつも周りに笑顔を絶やさない力がありました。美春を見かけたら、いつもにこにこして人が寄ってきたでしょう。

天枷美春さん。
ロボットの美春は本物の美春をこう呼びました。そして、自分をそんな素敵な女性として「作ってくれた」天枷美春さんに感謝してもしきれない。だから、自分は怪我をしている本物の美春さんの代役を立派に務めたいと願うのです。それも完璧なまでに。そんな想いから冒頭の台詞を述べるのです。

美春っ! あんた、この世知辛い世の中なのに、めっちゃええ娘やぁ!なんて健気なんだぁ! もうハンカチを持たずにこのゲームをできません。

やがて、主人公とたくさんの想い出を作った後、美春はオルゴールを聴きながら静かに機能を停止します。その後、ラストシーンでは再び元気になった本物の美春が主人公に向かって手を振ります(つまり、本物の美春はこのシナリオでは出番なしになっているのです)。ですが、彼女は「美春」ではなくて、別人の「天枷美春さん」。主人公と美春との間にあった短くて楽しくて一生かけても追いつけない程の想い出を知っているはずはありません。思い出を二人で共有できることは、もはやないのです。そう考えると、ダ・カーポの作品の中では悲劇的な雰囲気ではありませんが、珍しく不幸なエンディングと言えるでしょう。

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鷺澤頼子(美咲)(CV:草柳順子/松来未祐)

「私は……外に出るのが、怖かったんです」

ネコ耳メイドさん。
世のオタクたちにとってこの言葉はどれほどの破壊力を秘めているのでしょうかね。立ち絵だけで萌えさせるキャラクターがまた現れました。このレビューを書くためにゲームをやり直したのですが、頼子さんのおどおどした振る舞いに、もう、ダメデス……(また枕を持って抱いているバカが一人)。やるなサーカス。

と、ゲームでは萌えに大活躍なのですが、アニメでは忘れられた頃にひょこっと出てきますね。せっかく朝倉家に住んでいるのですから、もうちょっと出してやってくださいな、スタッフ様。

さて、上の頼子さんの台詞が示す通り、このシナリオの題材は「臆病」です(まあ、ひきこもりと変えてもらっても構わないですけど)。でも頼子さん、あなたは本当は臆病なんかじゃなかった。家事もできるようになった。外にもひとりで出られるようになった。そして、主人公に自分自身の想いを伝えられるようになった。自分を変えようとする強い意志を持って、それを実行できる素晴らしい女性でした。
う~む、俺にもこの行動力があったらなぁ。そうなるには、やはり頼子さんのように恋をするしかないのか。

文句を言うなら一点だけ。実は猫の体だった頼子さんから元の姿である美咲に戻った後(つまり鷺澤頼子と言う少女は実在しなくて、本物の「頼子さん」は鷺澤美咲という少女になる訳です)、ダ・カーポの最後を飾るにふさわしい美咲の感動の告白シーンが待っています。しかし、システム上入れなければならないのでしょうが、なんで最後の最後でエロシーンを持ってくるのですか(笑)。これで全てのシナリオをクリアしたという余韻もなく、なんで? と言う疑問とともにずっこけてしまいましたよ。D.C.P.S.の方ではそういうシーンはないはずなので、感動したまま終われるかなぁと逆に期待しています。

まあ、それを差し引いても、D.C.~ダ・カーポ~、始まりは終わり、そしてそれは永遠に続く物語の締めくくりにふさわしいシナリオだと思いますよ。

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杉並(CV:東慎/岸尾大輔)

「正直になれよ。面白いこと、好きなことをやるのが俺達だ」

自分の良い所も悪い所も知っていて、損得なくバカをやって付き合えるのは学生時代に出会った友人だけなのかも知れません。ゲーム上では主人公はうっとうしがるシーンが多いのですが、「疲れる奴が来た」だの「かったるい」だの言いながらも毎日を楽しく過ごしているのは彼のおかげです。「影で世界の平和は俺が守っている」とうそぶいていますが、主人公の学園生活の楽しさの半分くらいは彼の存在で守っていたでしょう。

で、この杉並くん(成績学年トップ、運動神経抜群で、顔は美形の優男、ところが……)。ゲーム前半は主人公を巻き込んで大活躍します。それだけに後半の個別シナリオになるとめっきり影を潜めてしまうのは大変残念でした。冒頭の台詞は音夢シナリオの始めに出てきます。義妹の音夢を好きだという気持ちに迷う主人公、それに対して正直になれと励ますシーン。杉並シリアスモードでの最大の見せ場です。

いやあ、こんな友人、欲しいですねぇ。私が女なら彼に告白してますよ、きっと。

一方、アニメ版の杉並くん。もう、こちらははっきり言ってダメです。告白したくないです(笑)。原作の設定を完全に無視された高慢ちきなミステリ好きに成り下がっています。喋り方でそういう印象を受けるんでしょうね。

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