びんちょうタンが生まれた里へ
自分の車を買って、初めて訪れた場所。
江草天仁さんとアルケミストが描く、切なげで優しい「びんちょうタン」の世界。「びんちょうタン」たちの故郷である、和歌山県はみなべ町にやってきました。
欧風の家々が美しい、くぬぎタンたちが住む街。静かな山並みが広がる、びんちょうタンやちくタンが住む山。この二つを舞台に、物語は紡がれます。もちろん、みなべ町は後者。北へ向かえば、世界遺産にもなっている紀伊山脈の雄大な自然に触れることができるでしょう。温泉で有名な龍神方面へ向かうと、そこはもう杉林が生い茂る山の中。広がる風景や作中の「田舎入口」と書いたバス停とそっくりな停留所を見る度に、「びんちょうタン」の世界を実感できます。
阪和自動車道を南下して終点であるみなべICを降りると、そこは「びんちょうタン」が生まれた里。山に囲まれていますが、少し走れば海風にも吹かれそうな所なのです。日本一の備長炭の里、そして「びんちょうタン」はもうすぐ会える、と考えると心が躍ります。
紀州備長炭振興館
車を山中へ向けて走らせること30分。目的地である「紀州備長炭振興館」(土曜休館となっていますが、土曜午前中は開館していることが多いです)に到着しました。
元々観光客が多数来ることを、想定しなかったのでしょうか。その建物は雨が降り注ぐ中、ひっそりと建っていました。
びんちょうタン役の野中藍さんが先日植えた木は、ちょっぴり大きくなっているようでした。
入り口から玄関口、さらには少し奥のテーブルまで「びんちょうタン」のグッズが並んでいます。キーホルダーや風鈴、キャラクターを描いた小さなフィギュアやクッションなどなど。
聞くところによると、「びんちょうタン」愛好家がグッズを集めて来て、置いてくるのが恒例となったそう。今ではいろいろな品がキャラクターたちを称えるかのように捧げられています。極めつけは野中藍さんのサイン色紙と、入口を入って奥、左手にあるお盆です。どちらもオリジナルですから貴重なこと、この上ありません。
この施設を紹介しているのは、振興館の松本貢さん。松本さん自身、DVDの一巻に登場するのですが、実に気さくな方で館の案内から「びんちょうタン」誕生秘話まで伺うことができました。
松本さんの話、特にびんちょうタンに関わる所をまとめました。
■ 「びんちょうタン」の企画は元々みなべ町側ではなく、アルケミスト側から打診があった。
■ アルケミストの話にみなべ森林組合は反対、企画に乗ろうとしていた松本さんは約2年の歳月をかけて皆を説得した。
■ 「びんちょうタン」の看板がネットで取り上げられ、やがてメディアミックス化され、ついにはテレビアニメ化されることになった。
■ 今では、みなべ町から街おこしの材料として「びんちょうタン」を使って欲しいと依頼を受ける程に。
■ 結果、「びんちょうタン」目当ての遠方の人に加えて、地元の人が振興館へ足を運ぶことが増えた。
地元の名所っていつでも行けるが故になかなか訪れなかったりしますからね。
びんちょうタン、思う
「携わったスタッフが過保護なくらい愛を詰めた」と原作者の江草さんは述べています。
それを証明するかのように「びんちょうタン」には、ヒロインの少女たちを苦しめるような悪人が登場しません。紀伊山脈のような山々に訪れる、悠久の時間。移ろいゆく少女たちの四季。
松本さんは笑顔で言いました。
「『びんちょうタン』に関わる人たちは、みんな良い人たちばかりですよ」、と。まさかアニメーションが制作者の人格を表すことはないでしょうが、スタッフロールが出る度に、この娘たちは制作者たちに本当に愛されているんだなと感じます。
TBSさん。どうしてこの優しいアニメを深夜枠で流したのですか?
振興館の外に出ると、「びんちょうタンだぁ」とはしゃぐ子どもの声が聞こえました。声の方を向くと、ワゴン車から降りてきた親子連れが館へと向かいます。
紀州の自然豊かな里で生まれた備長炭を広めたい。
美しい風景のあるみなべの魅力を伝えたい。
松本さんたち森林組合とアルケミスト。みなべの街を、紀州備長炭を愛する人たちの思いは、果たして届いたのでしょうか。
振興館へ一目散に駆けて行った子どもは、キャラクターのグッズを見て喜んでいます。ワゴン車に目をやると、地元・和歌山ナンバーが記されていました。
思い、届くといいな。
「びんちょうタン」関連リンク集
公式ページ。各話紹介、バスツアー・みなべ町レポートなど。
原作者・江草天仁氏による。アニメパイロット版ダウンロードや「びん盆」の紹介。
森林組合と「びんちょうタン」の出会いが詳細に綴られている。
同行して頂いたK’s stationのレポート。オフ会風味。
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