集合時間の午前10時より早く、五人全員が近鉄日本橋駅に集まりました。中には、小学校の遠足に行くかのように前日眠れなかった人もいます。体調は大丈夫なのでしょうか。
「そうそう、もしものためを思って、これを持ってきたんですよ」
と、一人があるものを差し出します。それは、これからの苦難を思って予め用意しておいた特効薬。萌え死にそうな時でも、これを飲めばたちまちの間にHPを回復するという伝説の品。
ポーション(日本価格にして630円)。
全員に驚愕の表情が走った。
「HPが減るぅぅぅぅ」
「だ、だれかケアルをっ!」
こんな調子でスタートした「日本橋メイドツアーズ」。これから、13時間もの苦闘に挑むおバカさん、失敬、勇者たちの任務をこなす姿に神々しさすら覚えるでしょう。ほら、後光がさすように、空も晴れてきます。当日の天気予報は大雨だったというのに。
10:15「Cafeくらら」(現在は閉店)
萌えロード付近にある店舗で、可愛いイラストに惹かれて入るオタクもちらほら。日本橋のメイドカフェの中で最も開店時間が早く、午前9時からとなっている。お迎えから、給仕、見送りまでを指名できる「オーダーメイド」システムがある。
「萌えるイラストが店の前にあるね」
「これできっとふらふらと入ってしまうんだろうな。まさにオタクホイホイだ」
店舗に入ってから、メンバー全員にこの「日本橋メイドツアーズ」の概要を説明しました。
- 注文したものは責任を持って処理すること(どんなものが出されてもきちんと食べて/飲んで下さい)。
- 行った証として日付と店名が分かるもの(領収書など)を必ず貰うこと。名前も入れてもらうとなお良し。
訪れる順番は、日本橋にある北側にある店舗をグループAとし、南側にある店舗をグループB、それ以外の場所にあるのをグループCと分けた上で、地区ごとにローラー作戦のように制覇しました。
「Cafeくらら」を出てから南に、数秒も歩くと萌えロードに出られます。東西200メートルほどの小さな路地にメイドカフェが数店舗、競い合うように軒を連ねています。
11:00「CCOちゃ」
土日はイベントが多く、メイド服に巡り会うのは意外と難しい。「ホイミ」や「どろり濃厚」、「赤い彗星」など、メニューの名前が個性的であり一見しただけでは分からない。変わったメニューを注文すると、そのシチュエーションに合った台詞をメイドさんが言ってくれる。お試しあれ。
https://www.ccocha.com/
ひとしきり私がメニューを説明をし終わった後に、冒険者が登場。いきなり呪文を唱えてくれるというパフェの、「ホイミ」と「パルプンテ」を頼みます。まだ二店目だよ。後でどうなっても知らんぞ。
やーちん「パルプンテっ!」
「(ぼそっと)しかし、何も起らなかった」
やーちん「ホイミっ!」
「いやー、やっぱりケアルじゃないと(FF派)」
注文の多いご主人様たちだ。
(実際にはメイドが呪文を唱えます。効果の程は頼んでからのお楽しみ)。
11:50「e-maid」
難波駅に近い立地柄であり、透明張りのガラスで中がよく見えるため入りやすく、普通の人が多い。メイドの数も多い。休日には終日人が押し寄せて入れないこともあるため、敢えて喫煙席を狙う手もある。元々の業態がカフェレストランだけあって、料理の質の高さと敷居の低さは日本橋随一。
https://e-maid.net/
「一般人ばっかり。ああ、よく考えるとオレも一般人だった」
「一般人と連発する所が、そこはかとなくオタを連想させるのですが」
ここでは味が評判の料理を頂く。
「領収書の宛名書きはいかがいたしましょう。」
やーちん「KOMA、とアルファベットでお願いします」
「おい!」
その後、壊れ行くメンバーとともに、ほぼ全員の名前を書いた領収書が出来上がってゆく。株式会社Happy-go-Lucky宛、などなど。
12:45「萌えしゃんどん」(現在は閉店)
難波駅に最も近い店舗だが、狭い階段を上って二階に上がるために見落としやすい(松屋の二階にあります)。普通の喫茶店のように新聞から漫画雑誌まで置いてあるので、個人的には大助かり。
偶然でしょうか、私たちのグループに給仕に当たったメイドさんが、全くなれていない手つきで料理を運んできます。
料理を少しだけこぼして。
「あのっ、ごめんなさいっ!」 ぺこぺこと頭を下げる。
「えと、えと、ケーキをご注文のご主人さま」 きょろきょろと見回している。
他にも小首をかしげたりするしぐさがあったり、萌えるしぐさを連発していたので、同行していた方々のボルテージが上がる上がる。
「ストップ高ストップ高!」 ← テーブルをばんばんと叩いている
「ドジっ娘属性がオプションなんですかっ!」
「羽衣羽衣(ういうい……原文ママ)しくて最高!」
何ですかこの盛り上がりようは。
これだからオタクという生き物は困りますね(隣で冷静に漫画雑誌を読みながら)。
今回も領収書に異変が。
「領収書のお名前はやーちんさんでよろしいですね。但し書きはいかがしましょう?」
「飲しょく……」
「『萌代』ですねっ」
私はケーキセットを食べたのではなく、萌えを堪能するために来たらしい。
14:00「CANDY PANIC〜いちご味店〜」(現在は閉店)
アニメ・ゲーム・パソコン・コスプレのオタクな店が、南北数百メートルに渡って立ち並んでいるオタロード。その北端にあります。店舗は雑居ビルの四階にあるために、一人で行くには勇気が必要かもしれない。メイド服に趣向を凝らしており、中には背中の大部分が見える艶かしいものも。靴を脱いで、スリッパで入る唯一のカフェで、メイドさんはパニッ娘と呼ぶ。
http://blog.livedoor.jp/candypanic/
「みなさん、もちろん今まで何十店舗もメイド喫茶を回ったことがあるんでしょ?」
この質問は当たり前すぎるよね。それこそ、毎日日記に「今日はどこそこのメイドカフェに行った」と書いているとか、数々のメイドさんに個体認識されているとか、0.5秒で日本橋の全メイドカフェを巡る最速ルートが構築できるとか、それくらいの能力がないと、この企画に着いて来られません。
「今日が初めてです」
え?
メンバーの一人の言葉に、我が耳を疑いました。
今日がメイドカフェデビューなんですか?
もう少し突っ込んで話を聞いてみると、今まで一度も行ったことがないからこそ、今回のツアー(オフ会)に参加してみたかったとのこと。私は、その向こう見ずな勇気に感嘆すら覚えました。一日10店以上も回って、これから、彼がメイドさんを見てトラウマにならないか心配です。
14:45「MEL CAFE」(現在は閉店)
店舗、料理の質、メイドさんと三拍子揃った良店。特に、ウッドデッキ、ウッドチェアを使った店舗の綺麗さは日本橋トップクラス。お帰りしたご主人様、お嬢様の満足度も非常に高い。気遣いからか、よく水を注ぎに来られる。
https://www.mel-cafe.com/
北部のミッションを全て完了し、舞台は南側の地へ。
そろそろ、飲み、そして食べ過ぎてきたので量が少ないと思われるホットココアを注文。どの店に行ってもアイスとホットではアイスの方がたくさんグラスに注がれているのが世の常です。
「あ、俺もホットコーヒーにしよう」
さもあろう、さもあろう。14店回るにはノリだけでは達成できません。賢明な判断だと思います。
「ホットココアのご主人様」
「ホットコーヒーのご主人様」
出されたホットココアとコーヒーを見て、一同の目がぎょっとなる。大きめのマグカップに、これでもかとばかりに並々とココアとコーヒーが注がれていた。さすがは普通の人やオタクが誰しもが言う「メルカフェは名店だ」という言葉は間違いなく本当のようでした。
サービス、良いのですね。
「裏目に出ましたね」
計画を立てても常に斜め上から現実がのしかかってくるサイト。それがHappy-go-Lucky。
15:45「めいどるちぇ」(現在は閉店)
広域タウン情報誌「関西ウォーカー」に掲載された、普通の人が多くやって来るメイドカフェ。メイドカフェとリフレクソロジーが併設しているため店内は狭く、休日には店外に待つ人々の行列ができる。休日に訪れる場合は、待つ覚悟が必要だ。雨の日にお帰りすると、ポイントが増えるサービスがある。
ここでは、カフェではなくリフレを選んだやーちん。ハンドリフレとフットリフレの二種類があるのだが、私はハンドリフレを選んだ。さて、なぜでしょう。
答えは、メイドさんが手を握ってくれるから。
お嬢様はメイドさんを見たい、かつ綺麗になりたいという願望で来ているのかもしれないが、不純な動機で来ているご主人様は結構多いと思う。うん、きっとそうに違いない、と自分を正当化してみよう。
ハンドリフレの10分間はあっという間でした。
人づてに聞いた話ですが、リフレから帰ってきたときの私の顔は、今まで見たことがないというような幸せな顔をしてふやけていたらしいです。まずいな、これからはメイド喫茶ではなくてリフレに通い出すかもしれない(不純な動機)。
「めいどるちぇ」を後にした時間は午後5時。ここで時間切れのため、エルベの蛍氏とお別れ。4人になった一行で、後半戦へと突入します。
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